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  • Hideyuki Takemoto

犬の名前はロク


我が家で犬を飼うことが決まった。父親が3万円出した。血統書つきの柴犬だ。平成6年のことなのでロクと名付けられた。


父も母もロクを可愛がった。我が家には子供がいないから犬が代わりとなった。この犬、ロクにはおかしな癖があった。性交をしないのだ。大きくなって他の犬がやってるのにやらないのだ。理由としては足の怪我が疑われた。母親が自転車のかごに入れて運んでるときに飛び出した。そこで前足を痛めた。一生残る障害となった。


この犬は10数年生きた。ある日、急に行方が知れなくなった。我々はあちこち探したが見つからなかった。父親は「最後を飼い主に見せない本当の忠犬だった」と言った。母親は諦めがつかず友達に頼んで探し続けた。1年くらい経ったある日も小郡に犬を探しにいった。


自分はおかしいと思った。いくら自分の孫と思っていたかも知れないが犬の歳が歳であり、1年後生き延びてるとは思えなかった。自分は父親と相談した。母親が脳の病気ではないかと疑ったからだ。


嫌がる母親を病院に連れて行き検査をした。2週間後の結果はアルツハイマー病だった。レントゲンをみせられたが脳の一部が無くなっていると医者は言った。薬が出され治療が始まった。薬の名前はアリセプトでともかくこの薬を飲ませた。


その母親が死んだのは3年前だ。確かに人としての反応はなくなったが、それでも普通に生きており排泄の問題もなかった。


柴犬を飼ってるひとはたくさんおり街角でよく出くわす。実際に死んだロクにそっくりだ。


自分はそういう犬を見るたびに父母が可愛がっていたこと、自分が子供を作らなかったこと、「お見合い」が兄の病気が理由でこわれたことなどをぼんやりと思い出す。


思い出すこともあるのだった・・・・・・・



この文章は書籍化される予定です。

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